「男の産後うつ」になったようだけど女装したらなおったみたい

作詞家としての小室哲哉。大切な関係の喪失。「もう会えない人」との思い出を歌う。

小室哲哉さんの引退表明から1週間が経ちました。引退の是非についてはさまざまな意見があります。私も思いを書こうかな……と思っていたのですが、秀逸な記事があり、私の思いはここにすべて書かれていました。

tamanet.at.webry.info

ですので、私はちょっと別の角度から小室哲哉について語りたいと思います。

それは、メロディメーカーではなく、「作詞家としての」彼についてです。

 

 

作詞家歴代4位の売上実績

一般的に小室哲哉というと、作曲家と認識されていると思います。皆さんの脳裏には、シンセサイザーを操り、ショルダー・キーボードでステージに立つ小室哲哉のイメージが強くないありませんか?でも私は、小室哲哉という作詞家としても、一流じゃないかな?と勝手に思っています。

 

2015年のデータですが、オリコン社が次のような記事を出しています。

www.oricon.co.jp

これによると、2015年12月時点での、歴代作詞家「シングル総売上枚数」トップ5は次の通りです。

■作詞家別シングル トータルセールス歴代TOP5
1. 秋元康…1億22.6万枚
2. 阿久悠…6834.0万枚
3. 松本隆…4985.4万枚
4. 小室哲哉…4229.7万枚
5. つんく♂…3796.1万枚 

秋元康が桁外れですね……(^_^;)

2015年でも小室哲哉は4位にランクインしています。まあ、秋元康、小室哲哉、つんく♂は、CDバブルであった90年代の寵児ですから、その恩恵も大きいでしょう。

そう思うと阿久悠と松本隆のすごさが浮き彫りになるような気もします。

(断っておきますが、売上があるからいい作詞家だ、と安直に判断するつもりはありませんよ)

 

作詞数はどうか

Wikipediaのこのページによると、おそらく600曲以上を作詞しています。(共同作詞や、リミックス曲なども、それぞれ1曲とカウント)。420曲くらいまでかぞえましたが、めんどくさくなったので止めました( ;∀;)

数えているとき、何回か「小室みつ子」を間違えてカウントしたのもあったので……だいたい600曲というのでご勘弁ください。

小室哲哉提供楽曲一覧 - Wikipedia

 

阿久悠や秋元康は、詞の提供数が5,000曲以上もあるそうですから、この人たちは怪物級ですね。

 

小室哲哉の初めての作詞曲は何か?

初めて作詞した曲は、小室哲哉が19歳の時の曲だそうです。先輩ミュージシャンであった阿部晴彦氏からの依頼で作詞を手がけていたものです。阿部晴彦氏は不慮の事故で他界。曲は表に出ることはなくお蔵入りになっていたのですが、2007年にTM NETWORKの曲として復活しました。

 

19歳の小室哲哉が書いた詩は、こんな詩でした。彼っぽい詩だと思いません?

You Can Find

きらめく町を通り抜け

ときめく夢をかくしつづけ

子供たちは 何もおそれない

いつだって光追い求める

はるか過去への希望続け

目の前に浮かぶ Situation

やさしさを逃す Hesitation

今は時のかぜ

みちびく言葉を綴り

きらめく女神うそをつく

わめきちらす大人経ちのセレナーデ(LOVE SONG)(挽歌)

望みのない 明日はまた動く

 

「もう会えない人」に向けた思いを表現するのが、小室哲哉作詞の真骨頂

小室哲哉の詞に影響がよくみられる……と私が勝手に思っているのが、小室哲哉の従姉弟である「晴実ちゃん」の存在。

晴実ちゃんって誰?と思うでしょうが、小室哲哉の一つ年上の従姉弟であり、彼の音楽感に多大な影響を与えた一人です。前半生の自伝とも言えるこの本の中でもよく語られています。 

小室哲哉 深層の美意識

小室哲哉 深層の美意識

 

従姉弟の晴実ちゃんの影響を受けて、当時高校生だった小室哲哉もブリティッシュ・ロックに傾倒していったのだそうな。二人は毎日のように逢い、音楽について語りあい、晴実ちゃんは小室哲哉の音楽性を当時から最大限の評価をしていたそうです。

晴実ちゃんは残念なことに、小室哲哉が大学生の時に亡くなっています。自殺だったのではないか、と言われているらしい。

 

ところで、TM NETWORKの"Here, There & Everywhere"という曲は、小室哲哉が中学生の時に作った曲なんだそうだ。おそらく、晴実ちゃんにも聞かせた曲なのではなかっただろうか。その曲に"Here, There & Everywhere" という、ビートルズ(ご存知の通り、イギリスのバンド)の曲と同じタイトルをつけているんだよね。そしてその曲に小室哲哉自身が詞をつけて世に出しました。

 

Here, There & Everywhere (作詞:小室哲哉 作曲:小室哲哉)

 

この曲の詞を読むと、晴実ちゃんとの思い出を述べているのではないか……と思える歌詞の部分がある。例えば、

「ああ君と話していた夜がなつかしい」

「涙にくれた出来事さえ人はいつしか忘れるように 覚えた冬の星座は春になればすべて変わるだろう」

「どこにいても気持ちはそばにいるよ」

という歌詞があって、別れてしまった「もう会えない人」に向けて歌っていると感じられる。

 

この曲と同様、晴実ちゃんのことを歌っているのではないかと密かに私が思っているのが、皆さんご存知の"Still Love Her"。これも小室哲哉作詞曲。

 

 Still Love Her (作詞:小室哲哉 作曲:小室哲哉・木根尚登)

 

この曲は歌詞に「二階建てのバス」と出てくるように、ロンドンが舞台なんだけれども、ロンドンはやはり晴実ちゃんと若かりし小室哲哉が憧れたブリティッシュロックの本場。
この曲が作られたとき、小室哲哉は活動の拠点をロンドンに移しており、アルバム"CAROL"のレコーディングもロンドンで行われている。

ブリティッシュロックが好きだった晴実ちゃんのことを念頭に置いて、皆さんにはこの曲の歌詞をぜひ眺めてほしい。そしてタイトルの"Still Love Her"から、小室哲哉の晴実ちゃんに対する思いがわかるのではないかと、私は邪推している。

 

このように、晴実ちゃんとの死別という経験があるためか、「もう会えない人」に向けたせつない歌詞に、小室哲哉の詞の真骨頂があると私は勝手に思っている。globeの"departures"もそんな歌詞だし、最新曲であるPANDORAの"be the one"も、そういう風に読める歌詞だなあと思う。

 そして小学四年生の女の子になってしまったと彼自身が言うKEIKOも、もしかしたら「もう過去とは違う、会えない人」なのかもしれない。


繰り返しになるけど、小室哲哉の魅力というのは、大切な関係の喪失、そして「もう会えない人」の思い出を抱えながら生きるという、誰もが経験している切ない心情を歌うところにあり、その歌詞を多彩なメロディラインに乗せて、魅力あふれるヴォーカルに表現させるところに、大ヒットの要因があったのではないかと思っている。

 

私の素人解釈ですが、もう小室哲哉作詞曲が聞けなくなるのはさみしいことです。