「男の産後うつ」になったようだけど女装したらなおったみたい

旧態依然としたクライアス社と、21世紀型の組織を実現しつつあるプリキュア――「HUGっと!プリキュア」に見る現代組織論

※これは私の妄想記事です。ネタとして読んでください

私も子どもちゃんも大好きなプリキュア。今年の2月からは新シリーズ「HUGっと!プリキュア」が始まりました。

「HUGっと!プリキュア」の敵組織は「クライアス社」という、企業を模した組織になっていて、プリキュアたちはいわば大企業の管理職・経営幹部と戦うという構図になっています。この点に着目してか、「HUGっと!プリキュア」は日経流通新聞にも取り上げられました。

www.nikkei.com

上記の記事でも識者として経営コンサルタントやシンクタンクの研究者が分析をしていますが、私も分析してみます。

 

クライアス社の組織構造は伝統的な階層別組織

東映のプリキュア公式ページにはクライアス社の会社概要と組織図が示されています。

http://www.toei-anim.co.jp/tv/precure/character/criasu_company.php

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見ての通り、社長を頂点として複数の管理職がいるという階層別組織になっています。会社勤めをしている人にとっては違和感のない組織図だと思う。創業当社の企業や、従業員数が少ない小規模企業を除いては、このような組織でない企業を探すほうが難しいと思います。

階層別組織の弱さ。俗人的な報連相に頼らざるを得ないクライアス社

伝統的で一般的だからといって、階層別組織は万能ではありません。クライアス社の他支社がどうかはわかりませんが、すくなくともあざばぶ支社(プリキュアに攻撃をしかけている現場の支社)では、階層別組織の弱点が見えます。

階層別組織の弱点の一つは、不測の事態への対応力。例えば6話では、リップル課長が次のように発言をしています。

なんでプリキュアまた増えてんの?ホワイト以外にどんどんミライクリスタルが増えてるじゃないの。チャラリートのやつ、報連相がなってない。報告、連絡、相談で報連相。仕事で一番大事なことでしょう?

リップルが言っているように、現場で何が起こっているかを上層部が把握するには、報連相しか手段がありません。しかしこの報連相というシステムは非常に脆弱です。現場が意思をもって「報告をしない」と決めてしまえば、情報が伝達されず、上層部は正確な意思決定ができないのですから。

3話では、現場(チャラリート係長とルールーの間)で、次のような会話が交わされています。

チャラリート「そういわれてもなあ。ルールーちゃんには教えちゃおっかなー。実は報告書出さないのにあ理由があんの。あのね、見たことないプリキュアが出ちゃってさ。それも二人。」
ルールー「捜索中のプリキュアではないと」
チャラリート「うん」
ルールー「不測の事態。より迅速かつ速やかな報告が必要です」
チャラリート「ダメダメ!ミライクリスタルホワイトの手がかりないし。なにより新しいプリキュア倒してないのよ。俺ちゃん怒られちゃう。なんか手ないかな?」

チャラリートは、自分の失敗を隠すためにわざと報連相を怠っていますね。これでは上層部に正しい情報が上がらず、その対策をとることもできません。クライアス社の上層部の苦悩が目に浮かぶようです。

結果として不測の事態に対応できない

上層部が適切な対策をとることができなければ、現場の問題を解決するのも困難です。4話では次のような会話が現場で交わされています。

ルールー「データの分析が完了しました」
チャラリート「サンキューメルシー。ルールーちゃん、ざんぎょうメンゴねー」
ルールー「問題ありません」
チャラリート「対策はばっちり。ハプニングでもない限り大勝利」
ルールー「ハプニング?」
チャラリート「例えば、また新しいプリキュアが現れるとか?まさかねえ」

この後、ほまれがキュアエトワールへ変身しそこねたものの、5話で新しいプリキュアが現れるというハプニングがあり、6話ではチャラリートは閑職(倉庫)へと異動になってしまいます。

チャラリートからタイムリーな報連相があれば、クライアス社の上層部もオシマイダーの大量発注をして、プリキュアを仕留めることもできたでしょう。

もっというとクライアス社の問題の本質は報連相ではなく、信賞必罰の社風にある

しかしチャラリートの心情もわからなくもありません。クライアス社は信賞必罰の組織文化だからです。失敗をして罰せられるとなると、失敗を隠したくなるのは人間の心理として当然のこと。5話では、管理職会議の場で次のような会話が交わされています。

チャラリート「ちょっと待ってくださいよ。リストルさん、どうして俺ちゃんが罰を?」
リストル「なぜ報告を怠ったのです。データのないプリキュアが現れたと」
チャラリート「それは……ルールー、お前がちくったのか」
ルールー「組織運営において報告、連絡、相談は重要。罰せられるのは当然のこと」
パップル「よくこんな失敗隠し続けたわね。ぶっとび」 

このような社風だと、失敗を挽回しなければ自分の居場所がなくなると恐れるのも仕方ありません。報連相が機能しない根本原因は、チャラリートにあるというよりは、この社風にあるといってもいいでしょう。

一方、信賞必罰の「信賞」の部分は、3話でチャラリートが「組織で成り上がるには仲間を出し抜かなきゃ。俺ちゃんひとりでお手柄独り占めってやつ」と語っているように、手柄を立てると出世をするという仕組みになっています。この辺りも、現場が失敗を隠し、功を焦る気持ちに拍車をかけているといえるでしょう。

そもそも、報連相と承認が不要ではないかと思える

報連相とともに、クライアス社の動きを鈍くしているのが稟議の仕組み。1話では、係長が現場に出ることについて、社長のクライが決裁印を押しています。

パップル「あーもう!あの時にあいつを逃さなければ」
リストル「ボスは無事ノルマを達成した者に昇進を約束するでしょう」
チャラリート「俺ちゃんがやってやるっす!軽ーく奪ってやるっすよ」
リストル「頼もしい。それでは。稟議、承認」
クライ(決裁印を押す)「未来をなくせ。必ず奪うのだ。ミライクリスタル」
一同「クライアス社に栄光を!」

これは組織的にはかなり不可解です。会社概要を見ると他支店もあるクライアス社は、かなりの組織規模になると思われます。いくらミライクリスタル確保という重要な目標に直接的に取り組む現場だからといって、係長クラスの行動ごときに社長が決裁をするというのは大げさですね。

もっというと、課長と部長という管理職が機能していません。パップルは係長のチャラリートをサポートしている描写がない(7話時点で)どころか、5話では会議でのチャラリート(係長)の渾身の直訴により、社長が部長と課長を飛び越えて指示を出すという、階層別組織ではしてはいけないことをしています。

リストル「チャラリート君、君の処分は」
チャラリート「とっておきの作戦があるんです。俺ちゃんに最後のチャンスをください」

クライ「チャラリート。その言葉、信じよう。」
リストル「失敗したときは、わかってますね」

このあたりは階層別組織の体をなしていながら、組織の秩序を社長自らが乱しているという、創業企業にありがちな構図です。このような組織であれば、パップルのような中間管理職が現場に無関心になるのも仕方ありません。

クライアス社では報連相も稟議の仕組みも機能していないにかかわらず、人事評価のためだけに無理に仕組みを維持しているといういびつな姿が見えます。こういう仕組みはやめてしまって、現場に権限を委譲すればいいんじゃないでしょうかね。

現代の組織論では、階層別組織に代わる組織形態が望ましいとされている

ご覧のように、階層別組織であるクライアス社は機能不全を起こしています。これはクライアス社に限ったことではなく、現実の現代の私たちの会社組織でも同様です。現代の組織論では、このような階層別組織に代わる新しい組織の姿が提示されています。

例えば、20世紀の終わりごろからは、階層別組織に代わるものとして、ネットワーク組織という、フラットで構成員同士がゆるやかにつながっている組織のほうが成果を上げ、イノベーションが起こしやすい、と言われるようになっています。これは、階層別組織の最たる例ともいえる軍事の世界でも同様です。1993年にソマリア民兵との戦闘(映画ブラックホークダウンで描かれた戦闘)で大きな損害をうけた米陸軍では、非対称戦においては階層別組織では迅速が意思決定ができないことに気づき、個々が自律的に動ける軍隊を目指して、IT技術の導入を図っています(ランドウォリアー計画)。

また、Google社が2012年から「プロジェクトアリストテレス」という社内調査を行ったところ、社員のパフォーマンスが最も高い組織は「心理的安全性の高い組織」だということがわかったのだそうです。

gendai.ismedia.jp

Googleの社内調査によると、目標や賞罰で従業員を統制するやり方ではなく、「ここに自分の居場所がある」という安心感がもてる職場で働く従業員が、もっとも高いパフォーマンスを見せたというのです。

そして最近発売された書籍で「ティール組織」という本があります。この本の帯の紹介文をそのまま引用すると

上下関係も、売上目標も、予算もない! ?
従来のアプローチの限界を突破し、
圧倒的な成果をあげる組織が世界中で現れている。 

という本であり、既存の上下関係や信賞必罰をもとにした「恐れによるマネジメント」に代わる、新しい組織形態――自律性や自分の居場所を大切にする組織――について解説した本です。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

他にも挙げればきりはないのですが、最近は階層別組織の限界というものが顕著に語られるになっています。クライアス社がドンくさいのも、階層別組織の限界に直面しているからにほかなりません。

一方で、21世紀型の組織を実現しつつある「HUGっと!プリキュア」チーム

階層別組織であるクライアス社と、組織的にも全く異なる組織になっているのが「HUGっと!プリキュアチーム」である、という見方も可能でしょう。

はな、さあや、ほまれの3人は、利害で結ばれた関係ではありません。はなには漠然とした「なりたい自分になる」という目標しかありませんし、さあやは自分のやりたいことがわからないし、ほまれに至っては過去の失敗を引きずって立ち直る過程にいます。3人に共通するのは「クライアス社の野望を防ぎ、未来をセキュアな状態にしたい」という思いしかありません。

プリキュアには特定のリーダーというものもいません。これは歴代のプリキュアに伝統的なことでもありますが、メンバーはフラットであり、誰かの指示に従って戦うということがなく、それぞれが自律的に動いています。指示もなく自律的に動くということは、報連相も決裁の仕組みも不要であり、これが前述のネットワーク組織のあり方に近いといえるでしょう。フリーランスがゆるやかに集まったような組織だと思ってもらえたらいいのではないかと思います。

クライアス社のルールーの言葉を借りますが「迅速かつすみやかに」動ける組織なのは、むしろプリキュアのほうであり、いちいち会議を開かなければ何も決められないクライアス社との違いはそこにあります。

クライアス社とプリキュアの組織的な違いは、いわば旧態依然の大企業と創業当初のベンチャー企業ほどの違いがあります。この21世紀において、どちらがこのイノベーションを起こせるのかは明白ですね。